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  金木犀の駅     柳生まちこ

 

カタン コトン…

気付いたら知らない電車の中にいた

行き先はわからない

いつ買ったのかわからない切符には

 ○○駅行き

と書いてあった

真っ暗な景色と誰もいない車内

わたしは明日の仕事のことを考えると

お腹がぎゅうっと痛くなった

わたしは一体何をしているんだろう

 

夫の心は遠くに行ってしまった

娘が二人 そうだあの子たちは今

どこにいるの 何をしているの

真っ暗な景色から抜け出した

トンネルの中だったようだ

空は緑色 花や草木は紫色

飛んでいる鳥や虫は赤色

ふと 隣の列車に足を踏み入れてみた

小さな男の子がひとり すわっていた

 

 ひとりでどこに行くの

わたしは男の子に尋ねた

 ○○えきにいくの

男の子は答えた

 おばさんはどこにいくの

わからない

わたしはどこにいけばいいのかわからない

すると男の子は

 きんもくせいのえき おすすめだよ

と言った

わたしはなんとなくその駅が気になった

 

二人でおしゃべり その間にも外は

いろんな景色に変わってゆく

途中で窓を少し開けてみた

穏やかな陽だまりの匂いが 

風に包まれて電車の中に入ってくる

クン と少しだけ金木犀の香りがした

 

突然外の景色が金色に輝きだした

男の子が

 きんもくせいのえきだよ

と言う

とっさに降りなきゃいけない気がした

もっと男の子と話をしたかったけれど

 バイバイ 気をつけてね

男の子と手を振り合って電車を降りた

 

目を覚ますと 目の前で娘が二人

泣き叫びながら私を揺さぶっていた

意識が朦朧とする中

娘の身体から

金木犀の香りがした 

  私について話そう

                                    やまさき あきこ

 

さあ 心を開いて

まだ私が知らないあなたについて

語り合おう

 

私達の今は過去からの贈り物

それを受け取った今だからこそ

話し合おう 分かち合おう

 

何年経っても未熟な私達は

コミュニケーション無しに

生きていくのは困難だ

 

人は文字の通り 支え合い生きている

 

言葉にしなければ誰にもわからない

私に教えて あなたが話せる一部でいい

 

人に興味が無いって人がいるけれど

私はその人に問いたい

「じゃあ あなた自身のことは 考える?」

あなたは自分に興味がある

ほらね 人に興味を持っている

 

人との関わりを断つ病が流行った

たくさんの人が 自ら命を天におくった

長く続いた暗闇の時代 

明ける日はもうすぐ

新時代の光が差し込んできている

仮面を外して笑顔で共に進もう

笑顔で手を繋ごう